カツオの一本釣りと言えば、豪快にカツオを釣り上げる活気あふれるようなイメージが浮かぶと思います。しかし、このイメージとは裏腹に現実の一本釣り漁は様々な問題に直面しています。
現状漁獲されるカツオの多くは巻網で獲られている
皆様が日頃食べられているカツオの刺身やタタキは、私達近海カツオ一本釣り漁船による生のカツオだけではなく、遠洋カツオ一本釣り漁船の冷凍物の他、大量 に漁獲される近海巻き網船の生のカツオ、海外まき網船の冷凍物があります。平成20年の漁獲統計によると、日本のカツオ総漁獲量は約30.4万トンとなっ ていますが、そのうち一本釣り船での漁獲高は11.5万トンでわずか38%にすぎず、大半が巻き網による水揚げとなっています。
マグロだけでないカツオ資源の枯渇化
巻き網漁では、群れの多くを一網打尽に漁獲するのに対し、一本釣り漁では群れの中の食い気の有るカツオをだけを釣り上げるので、自然に対して優しい漁法と いえます。こうした巻き網船による大量の漁獲により、カツオの資源量も減少してきているのではないかと危惧する関係者が多くなってきました。実際、現場で は一つ一つの群れが小さくなっていることや、更には群れに遭遇する機会さえ減少しているのです。そこで私達カツオ一本釣りに従事する全国の漁業者は、少し でも資源の減少を食い止め、自然にやさしい一本釣り漁が存続できるようにと平成20年から総漁獲量を5万トン以下に抑えた自主規制を行いカツオの資源保護 を行っています。私たちは、一方的に巻き網を非難するのではなく同じ漁業者として、まき網船も必要だと思います。安定したカツオの供給を確保するには、一 本釣りだけでは補えません。まき網船と一本釣りが共に存続できるよう願っています。
皆さんにこの現状を分かってもらい、皆さんと共に考えて行きたいと思います。
経営を圧迫する高額機器・漁船の高性能化、経費の増大
先に述べたように、減少するカツオ資源を相手に、これまでの人に頼った漁法では如何に有能な船頭と船員をもってしても、経営は成り立っていきません。減少 する漁獲量を補うためのソナーや海鳥レーダー、潮流計をといった高額な各種機器の購入、船の高性能化への設備投資と整備代金など様々な経費必要となりま す。それに加え、突発的な事象として昨年は、石油高騰による異常な燃料費の負担増がありました。また、巻網船による大量の水揚げによる価格低迷や追い討ち を掛けるような輸入の増加があります。今、多くの一本釣り漁船は、存続の危機に直面しています。
後世に残さなければならない一本釣り漁業
この様に私たちのカツオ一本釣り漁業を取り巻く環境は、大変厳しいものがあります。しかし、私たちはこの日本で生まれた伝統ある漁業を後世に残し、資源を 保護していかなければなりません。一本一本大切に釣り上げた最高のカツオを安定して供給し、一人でも多くの皆様に本当の美味しさを堪能して頂きたいと願っ てやみません。